4月・落人の里 越後秋山郷 |
1998年4月上旬
|
――越後の山峡にひっそり佇む平家落人村――
幕張新都心のビル群に長く勤めているせいか、あるいは単なる歳をとったための若いころへのノスタルジアか、最近は、昔見た『ど田舎』の景色を無性に見たい。
藁葺き屋根、庭先での仕事、放し飼いの鶏、牛、馬。
しかし、千葉も茨城も農家は立派な瓦、車庫付で、敷地もガーデン風に手入れされている。昔風の田舎を見に行こう。
信州の安曇野に行くつもりで家を出たが、中央高速が大渋滞。よし、関越で越後の山奥へ行こう。
目指すは秋山郷、塩沢石打I.Cを下りて、353号線から信濃川沿いの117号線を信州野沢方向へひた走り。飯山線・越後田沢駅への交差点を左に曲がり、405号線を津南、清津峡、秋山郷まで1本道。山峡がだんだん狭くなり、中津川の川音が近くに聞こえるようになると、来た,来た,田舎に来たよ。
………、田園風景だけど、しかし、………田舎だけど、しかし……。
藁葺き屋根の農家は歴史民族資料館で保存されていた。藁葺き屋根の家はそれだけしかない。
まあいいか。時代は着実に変わっている。
|
|
|
越後の山奥の雪溶けは遅い。
そして残雪のその色は目立つ。
しかし、春はちゃんと来る。
蕗の薹、つくし、・・
|
迷うことない1本の山道は、狭くなり、迫り来る山肌に雪が目立つ。 パッと集落が現れるが、人の姿は少ない。 |
|
|
ここは秋山郷への入り口、津南。
平家の落ち武者はここら辺を通った?
さらに奥地の人里離れた、山あいを目指して。
春はここら辺にも桜を咲かす。
|
ここは津南という。人家は山裾に並んでいるが、方向を変えると鄙びた村に見える。 |
|
|
|
|
俺はよう、昔10人もの家族に大事にされてよう、
雪掻きもしょっちゅうしてくれてな〜、
夜になったら、爺〜が囲炉裏に子供呼んでよう
昔話を毎日してたのを聞いてたただよう〜。
それが、今度な、郷土保存館を作るんだゆうて
分解されて、ここへ運んで来られてよう
だ〜れも住んでくれね〜だ。
さびし〜い。
|
津南の郷土保存民家の藁葺き屋根は家の中を見せてくれた。
冬の雪にも、風にも耐えられるように外に木の塀があった。 |
|
|
この屋根はなあ、見かけはよくね〜がな、
冬あったかくて、夏涼しくて
え〜んだぞ。
|
最近は屋根の藁も茅も材料がすくないから高いらしい。
さらに葺ける職人も少ない。もっと保存運動を進めて。 |
|
|
|
 |
蓑と菅笠
通気性が良く、汗も蒸発しやすいと聞く。
時代劇と漫画の世界でしか見れない。
しかし、なんとなく郷愁を感じる。
|
出入口に飾ってあった。手触りは悪くない。
現代でももう少し実用化されてもいいように感じるが。 |
|
|
おっ母―よう、町ん人が見てるよ。
恥ずかしいから、寝ションベンのフトン仕舞えよ。
しかし、何しにこんだらとこ迄来んのかな
町んほうがよっぽど見るもんがあるのになあ。
|
ここらへんが秋山郷。狭い谷あいに数十軒。どの家もさして大きくない農家風。屋根はほとんどトタン葺き。垣根なし。
昔は全部,藁葺き屋根だったんだろうに。しかし純朴な景色。 |
|

|
|
 |
おーい、そこの写真撮ってる人、
恥ずかしいから写さないで。
それより、お茶入ってるから飲んでいきな。
なんて誰も言ってくれなかった。
一度行ったくらいで地元の人と気楽に話したり、
家に入れてくれたりの関係は無理だよね。
|
前の写真の集落の峠から俯瞰。何か普通の町の風景と変わりがない。
なぜ?。屋根がトタン葺きで赤、青の原色だから。
藁葺き屋根の写っている、30年位前の写真でもないかしら。
家の中はもっと近代的で、囲炉裏もなく、床暖房だったりして。 |
|
|
与太、熊、みんな来い。おどーが獲ってきた
野兎がよく煮えてるぞ。食え、食え。
与太、今日は隣の村までおつかいに行っただと。
えらくなったなあ、さぶかったろ、
熊、粗朶をもっと燃やせ。
ほれ、雪が強くなってきたど。
明日はまた雪掻きだぞ、頑張らねばなあ。
|
この保存民家には、山仕事や、冬使う道具が並んでいた。
家の中は部屋の区切りがなく、もちろん、天井もない。
実際はどのように寝て、どのように休んで、どのように
食事をしたんだろう。家族の暖かみがわかるような、生活を彷彿させるような展示がほしいね。 |
|

生活の中心、家族全員が集まる囲炉裏
|
|
 |
ここから先が秋山郷だ。よく来てくれたな。
落人の平家茶屋で休んでくれ。
お酒もあるし、岩魚焼きもあるでよう。
今度は秋の紅葉を見においでな。
|
清津川の上流、中津川渓谷沿いに道を進むと標識があった。
平家茶屋は落人風ではなかったが、店の人が田舎風のもてなしで気に入った。お客がいないので岩魚焼きが早くでてきた。 |
|
|
雪がきれいだから撮ったけど、
何んもないから
次、いこーと。 |
木を乾かしてるのか、あるいはキノコの栽培でもしているのか。
何か気になるし、スナップもいいのでパチリ。 |
|
|
|

|
この桧はな、家の守り神じゃけんな。
北からくる風や雪を和らげてくれるんじゃ。
しかし、この家も年とった。
近々屋根を葺き替えたいがなあ、
どうなることか……。
|
人が住んでいる藁葺き家。土台に石を使う。
家の外板は古ぼけている。屋根に草が生えていた。 |
|
|
苗場山スキー場の反対側斜面。
苗場山からの豊かな水が
荒い滝となって落ちる先は中津川。
その昔、大蛇がこのあたりに棲んでいたとか。
昔は人家のない秘境だったのだ。
|
苗場山が正面奥。その反対斜面には、スキー場で俗化されているのに、こちら側は秘境。 |
|
|
|
 |
狭い往来から下がった所にその農家はあった。
祖母に夫婦、子供が3人。
わずかな畑で採れる食べ物だけでは生活できねえ。
そやけえ冬は栃の木で木工さしてえ、春〜なったら
売り〜行くだがな、なんぼうもなんねえだ。
だけどよう、春はまだええ。
山菜がとれるだでよう、飢えは凌げるで。
|
秋山郷で見つかった藁葺き屋根は郷土保存の対象であった。
それにしては保存状態が良くなかったなあ。 |
|
|
雪溶けの清流が流れる川っぷちに温泉があちこち。
その昔、落人は
畑の少ない山間で、
何を糧にして生活しているのか。
冬には春が来るまで、湯につかり
夏はわずかな畑を耕して、疲れをとるため湯につかり。
|
屋敷温泉、秀清館(0257-67-2168)。ここら辺に豪族の屋敷でもあったのか、中津川縁に建つ工事中の温泉。 |
|
 |
|
 |
白樺は雪と色がよく似合うが、
白樺も雪と闘って、倒れないように踏ん張る。
そして、夏にはあのやさしげな木陰をつくる。
白樺よ頑張れ。
|
秋山郷の最奥にある切明温泉のキャンプ地。
ここから先は志賀高原に抜ける林道だが、雪で通行禁止。
夏にくるのも悪くないかも。 |

|
|